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自分が黙り込んだせいで、また沈黙が訪れると、さっきまでの心地よい緊張感が舞い戻ってくる。
あの日以降、肩や手が触れることはあっても、あの腕の中に入ることはなくて‥‥。
やっぱり、向井の腕を意識していた。
いや、抱きしめられたいわけじゃなくて。
寒いからであって‥‥。
一生懸命、不毛な言い訳を繰り返す。
いつも通り過ぎる公園に差し掛かると、今まで暗かった夜道が明るくなった。
真歩は不意に向井の顔を見る。
向井は公園の中をじっと眺めていた。
その顔はやっぱり変化がなくて、何を考えているのか汲み取ることはできない。
「晴人!」
後方から女の人の声が聞こえた。
驚いて、立ち止まる2人。
晴人‥‥?
「神崎、少しここで待ってろ」
「え?」
向井が足早に歩いてきた道を戻っていった。
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