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心がざわざわする。
更にザラザラと心が削られるような痛み。
鍵を渡した向井はすぐに小走りで真歩のところに戻ってきた。
「待たせて悪い。 行くか」
向井は何事もなかったように真歩の自宅の方面へと歩き出す。
向井が話していた女性を見ると、こちらを見ているのを直感的に感じた。
真歩は目が合ってしまう前に目を逸らし、向井を追いかけた。
あの女性が向井の彼女だとしたら、深夜に別の女と歩いていることを気にするんだろうか。
彼女の視線がまだついてきているような気がして不安になる。
「あ、あの…」
「なに?」
「私、ここから1人でも帰れる」
「は? 1人で帰すつもりはない」
「でも‥‥」
「お前、また襲われたいのか?」
「そ、それはイヤだけど‥‥」
向井は彼女のことを気にする様子がまるでない。
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