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「あ、あの!」
「お前、今更‥‥」
「か、彼女!大丈夫‥‥なんですか?」
よく分からない感情の波に飲み込まれたくなくて、彼女の心配をする振りをする。
「彼女?‥‥あ、ああ。大丈夫」
「で、でも!ご、誤解するんじゃ‥‥‥」
「え? あ、ああ‥‥」
向井が何かに気付いたような顔をして、途端に意地悪そうに笑った。
「気になるか?」
向井が突然立ち止まり、真歩の目をじっと見た。
彼女の心配をしたはずなのに、自分のざわざわした感情を逆に突かれてしまって焦る。
「い、いいえ!気になりません!」
口に出して、それが敬語になってしまったことが動揺を表しているようで、目も当てられない。
向井に心を読まれた気がした。
「あっそ」
向井はいつもはぶっきらぼうに言う台詞を楽しそうに返したから。
そのいつもと違う音に、冷や汗が出て、顔をあげていられなくなる。
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