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でも言ってから恥ずかしくなった。
彼女がいるかどうか詮索していると思われたかもしれない。
それに、たぶん初めて、向井のことを先生と呼んだ。
真歩の前を歩いている向井の背中から答えはすぐに返ってこなくて、いつもよりも間が合った。
その間が恥ずかしさを増長させる。
向井が「ハハっ」と微かに笑った気がした。
「お前のテストが終わらなきゃ、安心して楽しめない」
向井の背中から声が聞こえた。
安心して楽しめない?
つまり、予定はあるにしても、勉強を教えないといけないせいで楽しめないって言いたいの?
「‥‥‥‥悪かったわね」
皮肉を言われたのだから、いつもみたいに強く言い返したかったけど、声は弱々しくなってしまった。
向井が突然立ち止まる。
「‥‥わっ」
そして、振り返ったので、俯き加減で歩いていた真歩は向井の胸にぶつかった。
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