3264人が本棚に入れています
本棚に追加
「‥‥それなら、このサイズじゃ小さすぎる」
「そ、それより大きいのが無かったの!」
真歩は慌てて言い訳をした。
「………あっそ」
向井がフッと笑ってくれたので、何故かほっとしていた。
「………ケーキ食べる?」
食で誤魔化そうというわけでもないけれど、そう提案したら、向井がぶっきらぼうながらも「ああ」と同意してくれた。
真歩は箱からケーキを取り出し、一緒に購入してきた紙皿とフォークを用意する。
向井は立ち上がると、談話室にある自動販売機で缶コーヒーを買い出した。
向井が背を向けているのを確認して、時計をチラっと見ると、23時29分。
あと約30分……。
その後も真歩はチラチラと時計を見てしまっていた。
ケーキを食べるのは久しぶりだと話し始めたのが23時33分。
ケーキを食べ始めたのが23時40分。
2人で食べるには大きすぎると文句を言われたのが23時45分。
ケーキを食べ終えたのが23時55分。
片付け終わったのが23時57分。
今すぐこの談話室を出れば、まだギリギリ間に合う。
だけど、向井は帰る気配がない。
自分だって、椅子から立ち上がろうとしない。
最初のコメントを投稿しよう!