心の壁=弱さ+逃避

8/24
前へ
/575ページ
次へ
向井が腕の力を強める。 余計に、向井の体温と心臓の音がシャツを通して伝わってくる。 やっぱりこの腕に抱きしめて欲しかった。 そう実感してしまった。 いつも身体の距離が近い2人。 暗黙の了解で、何故か抱きしめ合っている2人。 でも恋人ではない。 向井の気持ちはよく分からない。 からかわれてる? もしかして、好かれてる? 自分の気持ちだって、よく分からない。 どういうつもりなの? もしかして、好きなの? 向井が抱き締めた腕を引き上げたから、身体が椅子から立ち上がっていた。 そしてそのまま、テーブルの上に押し倒された。 思わず向井を見上げる。 片付けたケーキの箱と紙皿から、甘い香りがする。 向井がいつもよりも緩んだ口元で、ケーキを食べていた表情を思い出す。 それと同じ顔をした向井が真歩を見下ろしていた。
/575ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3264人が本棚に入れています
本棚に追加