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冷やかに言い放つ向井の指摘に、傷つきたくない心が反発してしまっていた弱い自分。
自分に自信があれば、向井の指摘なんて、実は受け流せていたかもしれなかった。
自分に強さがあれば、しっかりと受け止めて、教訓にできていたかもしれなかった。
『逆に叱られたいって思う女子生徒、多いよ?』と言った由依の言葉を思い出す。
弱さのせいにして、向井を単に毛嫌いしていたのは自分。
向井が冷酷で、非情なわけじゃない。
無神経な奴だというわけじゃない。
自分がそう思い込んでいただけだった。
「……これ、持ってろ」
向井が突然、コートに手を突っ込み、こちらを見ずに、何かを差し出してきた。
「え?」
向井は振り向かず、そのまま公園の奥を眺めている。
差し出したものを向井の手から受け取り、公園の灯りに照らして見てみた。
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