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教室から出てきた向井の行く手を塞ぐように、3人は向井を囲んだ。
こないだ1人で立ち向かっていた女生徒は話し掛ける間すら与えられずに向井にキリっと睨まれて立ちすくんでいた。
その隙に、スルッと隙間を抜けて向井は女生徒から立ち去って行った。
一瞬の出来事で、向井はある意味、鮮やかだったと思う。
今度は3人組。
さすがに3人に囲まれてはすり抜ける隙間もないらしい。
向井は立ち止まった。
「向井先生!」
「相談したいことがあるんです」
女生徒は頑張って声をかけていた。
でも向井は至って冷ややかだ。
「なに?」
向井は声を掛けてきた女生徒を睨むようなキツイ目と共に冷たく返事をする。
「あ、あの‥‥」
意気込んでいた彼女達も、向井のその表情に怯んだのか、次の言葉を無くしてしまったようだった。
「用がないなら、いいかな?」
向井は3人それぞれに一瞥した後、その場を去っていく。
教師なんだから、もっと生徒に優しく接したらどうなのか。
3人は結局、呆然と立ち尽くすしかないようだった。
女生徒達を一掃した向井が真歩の方に歩いてきた。
真歩は向井を無視して、通り過ぎようとする。
向井も真歩を一瞥して、何事もないように去っていった。
廊下ですれ違う向井は今までも、今もそんな感じだ。
近付くなオーラを放ちまくっている。
だから、真歩の向井のイメージは近寄りがたい男だったのだ。
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