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昼間の向井のイメージしかなかったから、最初、この男との特別授業に不安や憂鬱でいっぱいだった。
いちいち嫌味なことを言われて、針のむしろにされて胃を痛めるか、はたまた緊張感が走る沈黙にひたすら耐え続け、どのみち胃を痛めるか。
どうにしても辛い時間だけが過ぎていくかと思っていたのに。
意外なことに、この場所から逃げ出したい衝動に駆られることもなく、特に気まずい空気になることもなく、2人の時間は過ぎていた。
会話なんてないと思っていた分、これが案外続いているから不思議だった。
真歩の他愛のない発言を向井は冷たく無視しそうなのに、なんだかんだと毎回絡んできて、気付くと会話が成り立っていた。
まあ、言われることにイライラすることは別として、この男が近寄りがたいというイメージは薄まっていた。
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