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「教えるのが好きじゃないなら、なんで数学教師になったの?」
なんで、特別授業なんて提案したのかと聞きたかったけれど、そうは聞けなくて、ニュアンスをずらして質問を投げかけた。
すると、向井の顔付きが、途端に険しくなった。
え……。
な、なに?
その表情に身体が縮こまった。
黙り込むと、冷酷なオーラを発するだけに、本気で睨まれるとやっぱり怖い。
「………たまたまだ。
数学ばかりやってたら、そうなった」
不機嫌に返ってきた口調がちょっとキツイ。
「……そ、そう……」
何かマズイことを言ってしまった?
訳が分からず、気まずくなって下を向く。
「じゃあ、お前はなんでダンスなんだ?」
幾分冷たさは和らいだけど、まだ若干キツイ口調で質問を投げかけられ、ビクビクしながら、顔を上げた。
「女に人気のない理学部にわざわざ入学しておいて、なんでダンスなんだ?」
反撃されているようだ。
その質問はこの男だけには答えたくない。
「そ、それは‥‥」
口ごもって、向井から目を逸らす。
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