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警戒していた敵が味方になると言ってきた時の不意打ちは、痛い矢を放たれるよりも強力な攻撃らしい。
懸命に建てた防壁を自ら崩してしまいそうで、戸惑いとともに油断しそうだ。
今の言葉は本音?
それとも、作戦?
目を泳がせていた真歩を見て、向井はククっと笑い出した。
「素直じゃないことも知ってる」
その笑いは嫌味っぽくないはないけれど、楽しんでいるかのようにニヤニヤしていた。
勉強だけでなく、ダンスのこと、そして真歩の性格まで知り尽くしてるぞと言いたげなその顔に、恥ずかしさにも怒りにも近い感情が胸をモヤモヤさせる。
「‥‥‥‥むかつく」
「その減らず口もなところもな‥‥」
「‥‥‥‥っ」
急激な身体の火照りは、自分には止められなかった。
向井にやすやすとバレるほど、真っ赤な顔をしているに違いない。
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