心の距離 < 身体の距離

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この特別授業も1ヶ月が経ち、数学以外の科目にも取り組み始めていた。 向井の講義する科目ではないけれど、理系学部の科目は大きく括れば、ほぼ数学分野。 向井にとってはどの科目も領域らしく、指導内容に抜かりがない。 「これ、違う」 すかさず真歩のノートを覗き込んでは、間違いを指摘する。 「あ、‥‥はい」 「これも」 「う‥‥」 2つも間違っているなんて凹む。 ダンスは順調だなと喜んだのに、勉強はいまいちらしい。 指摘された問題を改めて見て、更に気が滅入った。 この問題は一番苦手な科目だ。 顔が思わず引きつってしまう。 向井がその顔を見て、鼻でフンっと笑った。 「その科目の数式は暗記だからな」 真歩のノートを取り上げ、スラスラと数式を順々に書き込んだ。 よくもまあ参考書も見ずに、数式がスラスラ書けるもんだと感心して見てしまう。 「これだけ覚えておけば、その科目の試験は大丈夫だ」 ノートを受け取り、数式を眺める。 方程式や定理など合わせて、ざっと30はある。 しかも数字と数学記号だらけで、どれも暗号みたいだ。 こんな数式、全部覚えられる気がしない。
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