3264人が本棚に入れています
本棚に追加
/575ページ
この特別授業も1ヶ月が経ち、数学以外の科目にも取り組み始めていた。
向井の講義する科目ではないけれど、理系学部の科目は大きく括れば、ほぼ数学分野。
向井にとってはどの科目も領域らしく、指導内容に抜かりがない。
「これ、違う」
すかさず真歩のノートを覗き込んでは、間違いを指摘する。
「あ、‥‥はい」
「これも」
「う‥‥」
2つも間違っているなんて凹む。
ダンスは順調だなと喜んだのに、勉強はいまいちらしい。
指摘された問題を改めて見て、更に気が滅入った。
この問題は一番苦手な科目だ。
顔が思わず引きつってしまう。
向井がその顔を見て、鼻でフンっと笑った。
「その科目の数式は暗記だからな」
真歩のノートを取り上げ、スラスラと数式を順々に書き込んだ。
よくもまあ参考書も見ずに、数式がスラスラ書けるもんだと感心して見てしまう。
「これだけ覚えておけば、その科目の試験は大丈夫だ」
ノートを受け取り、数式を眺める。
方程式や定理など合わせて、ざっと30はある。
しかも数字と数学記号だらけで、どれも暗号みたいだ。
こんな数式、全部覚えられる気がしない。
最初のコメントを投稿しよう!