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「覚えられる気がしない」
真歩は呟いてしまっていた。
向井が呆れたように息を吐き捨てる。
「ステップを覚えるのと一緒だろう?」
真歩は眉間に皺を寄せる。
「どこが一緒?ぜんぜん違う」
真歩は反論する。
「一緒だ」
向井は真歩の反論を受け付けない。
「ダンスと数学は違う。
ダンスのステップはひたすら身体を動かして、身体に覚え込ませる。
森先生が言ってた。
自転車に乗れるようになるのと一緒で、ステップも身体が覚えちゃえば、ずっと忘れないものだって。
でも、数学はすぐに記憶から消えちゃうし……」
真歩が更に負けじと反論すると、向井が少し不機嫌な顔を見せた。
その顔に、またやってしまったのだとたじろぐと、向井は途端にニヤっと含み笑いを見せる。
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