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さっきまでの状況を思い出して、また恥ずかしさが込み上げてしまい、身体に力が入ってしまう。
これは緊張やトキメキであるわけがない。
ただあの男が突然近付いてきたから、驚いているだけ。
いや、怯えてたせいだ。
真歩は夜道を歩きながら、向井の身体の体温や強引で力強かった仕草を、頭の中から追い出そうとする。
真歩のアパートは大学から歩いて30分も掛からない場所にあった。
だから、多少人通りの少ない路地も足早に抜けさえすれば、さほど危険も少ない帰り道のだったはずだった。
きっと今日の自分は意識も足取りも浮ついてしまっていたせいで、隙だらけだったのだろう。
帰り道で1番暗がりの路地で待ち構えていた痴漢にまったく気づかなかった。
それは本当に一瞬のことで、真歩は目の前から歩いてきた痴漢に突然口を塞がれてしまい、路地の近くの死角に引きずり込まれてしまった。
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