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向井の腕の力が更に強くなり、真歩の頬が向井の胸元に押し付けられた。
あ、あれ…‥‥?
そういえば、向井に抱きしめられてる?
恐怖と安堵の差に頭が支配されていたせいか、向井に抱きしめられているという状況に今、気付いた。
途端に数学図書館でのことを思い出して、自分の身体が熱くなる。
「あ、あの‥‥。
ちょっと離して‥‥‥」
真歩が小さくもがくと、向井の腕の力が更に強くなった。
向井の体熱が自分の肌に伝染しそうなくらい熱さを感じて、聞こえてくる向井の脈音に自分の脈音が重なる。
なんで、自分は向井の腕の中に大人しく納まっているんだろうか?
今からでも、思いっきり突き放せばいいのに……。
それなのに、さっきまでの恐怖のせいなのか、向井の腕の中で強烈な安心感に包まれて、抵抗する気力が湧かなかった。
それどころか、身体は向井の抱きしめる腕の力に身を任せてしまっている。
自分の身体の反応が理解できない。
向井の心臓の音が心に安堵感を満たす。
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