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その日を境に、向井が真歩に近付く距離は微妙に近くなっていた。
数学図書館で真歩のノートを覗き込む向井の身体の位置は常に至近距離だし。
鉛筆や消しゴム、本を渡し合う時に触れる指は以前よりも重なる範囲が広がったし。
2人で帰る夜道は自然と肩と肩が触れる位置だったりするし。
向井との身体の距離に戸惑いながら、気付いてしまっていた。
嫌なら思いっきり拒否すればいいだけのこと。
自分から離れればいいだけのこと。
なのに、何故かそれができない……。
大嫌いな男のはずなのに、近付く距離も触れる手や肩も、嫌悪感を抱かなくて。
それどころか、心地よい緊張感、はたまた安心感に包まれていて。
これは驚きや怯えとは違う。
心はまだ完全に警戒心を解かないくせに、何故か身体は先に解いている。
認めたくないけれど、本当の恐怖を味わってしまったせいで、向井との身体の距離の違和感の無さを認めざるを得なかった。
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