第1章

4/15
前へ
/56ページ
次へ
左隣さんちは【相良】さんか。 初っぱなショッキングだったからちょっとだけドキドキする。 でも大丈夫。 ばあちゃんがいつも言ってた。 笑顔さえ忘れなければ何事も必ずうまくいくから、って。 深呼吸を1つして落ち着いてからインターフォンを押す。 すると先ほどとは違いすぐに返事が返ってきた。 『はーい』 「こんにちは!隣に越してきた柳川です!引っ越しのご挨拶に伺いました!」 『はいはい、今開けますねー』 ドアから顔を覗かせたのは20代後半くらいの爽やかな男性。 スウェットにも関わらずだらしない感じがしない。 「初めまして!柳川です!これ、大したもんじゃないんですが」 「これはご丁寧に。もしよろしければ部屋でお茶でもいかがですか?」 差し出した菓子折りを丁寧に受け取りながら親指で室内を指す。 突然の申し出に驚きつつ、戸惑っていると、相良さんは頭をかきながら照れくさそうに笑った。 「いやぁ、すいません、引っ越し当日でお忙しいですよね?ここって住民の入れ替わりが激しいから中々ご近所付き合いに恵まれなくて。なので柳川さんとちょっとでも仲良くなれたらって思って焦りすぎました。どうか気にしないで下さい」 ばあちゃん、お隣さん凄く良い人みたいだよ。 「えっと、ご迷惑でなければご馳走になっても良いでしょうか?」 俺の言葉に相良さんはパッと顔を輝かせドアを大きく開いた。 「どうぞどうぞ狭い部屋ですが」 うん、同じアパートなんだから広さはうちと変わらないよ。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加