第1章

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なんやかんや話してるうちに昼時になってしまったので、今度は俺が薫を部屋に呼んで一緒に蕎麦を食べる事にした。 引っ越し蕎麦ってやつだ。 これもばぁちゃんがいっぱい持たせてくれた。 『引っ越ししたらね、ご近所さんや手伝ってくれた人達とみんなで蕎麦を食べるもんだ。そうすればその縁は長く続くからね』 ばぁちゃん、残念ながら引っ越し業者さんはとっくに帰っちゃったし、右隣の藤堂さんは誘うのに非常に勇気が必要だよ。 でも俺は自他共に認めるばぁちゃんLOVEっ子だから持ち合わせている勇気を出し尽くしてみるよ。 そう決心して3人前の蕎麦を茹でようとしたところで薫が不思議そうな顔をして俺の手元を覗き込む。 「3人前?」 「うん、藤堂さんも呼んでみようかと」 「え」 「え?」 「あーー」 「なに?まずい?」 「うーん、うーん」 「なんだよ」 「んーーー・・・・・・無理だと思うよ?」 「やっぱ?」 「うん、あの人は他人と関わるの嫌いみたいだから」 「そっか」 「それに俺とあの人ほぼ同時期にここに入居したんだけどさ、多分原因あの人なんだよ」 「原因?」 「そ、このアパートに人が居着かない原因」 「え?なんで?」 「まぁそのうちわかるよ。だから太一もあんま関わらない方がいいよ。なんかあったら俺に言いなよ」 「う、うん」
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