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貴史はおれに命令ばかりするいやなヤツだ。近所の骨董屋からトランプを盗むよう命令され、それに従った。するとトランプのジョーカーが話しかけてきて、悪い心で接すると自分が呼び出されるのだといった。お礼に願いを三つかなえてやるという。ただし、それは人を不幸にする悪い願い事でなくてはならなかった。
小学校周辺で動物が虐殺されているのが多く発見されていた。骨董屋の前にもネコの生首が見つかり、教室で飼っていた熱帯魚も全滅していた。おれは熱帯魚を人目につかない場所へひとりで埋めた。
おれは一つ目のお願い事をした。今度犯人が動物をいじめたら、その動物から反撃されてケガを負うように頼んだ。次の日学校へ行くとクラスメイトの真壁千里がケガをしていた。教室へ行くと、埋めたはずの熱帯魚が水槽に戻されていて、おれは犯人扱いされた。担任の大原先生は階段から落ちて学校を休んでいた。
熱帯魚はすでに死んでいたのだから、反撃されなかったはず。ほかの動物が虐待を受けていたのだろうか。それとも2人は無関係なのか。
おれはジョーカーのことからすべて事情を真壁に説明すると、真相を語ってくれた。大原先生が動物を虐待しているところを真壁が目撃してしまったのだ。先生と争っているうちに階段へ突き落としてしまったのだという。ジョーカーの魔法に抜かりはなかった。真壁が殺されそうになるのを、逆に反撃させたのだ。
おれは最後の願いをかけた。先生の記憶をなくしてほしいと。だけど最後の願いを先生を殺すことに使った方がいいのかなと少し思ってしまった。でも、おれたちにとって大事なのは先生に罰を与えることではなく、真壁を守ることだった。先生は真壁を口封じのために殺してしまうかもしれないから。
骨董屋のおじいさんにトランプを返しに行ったとき、こういわれた。誰もが悪い心を持っていて誘惑されるが、きみは踏みとどまれたのだよと。
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