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「あ、これが……私……?」
部屋には大きな鏡があった。
「そうだよ。人間になった姿」
綺麗だよね。
すっごく。
あ、そっか。その髪の色、ワニの鱗色なんだ。
緑がかっていて、でもところどころ灰色のほうが近かったり、一本一本が綺麗に色を変えていて、鏡の中を君が覗き込む度にそれが光に乱反射してる。
眩しくて本物の王子みたいだ。
それに瞳の色もさ、基本はダークな色しているのに、角度によってはワニ色になる。
金色の綺麗な光を見せてくれる。
だから、一度目が合うと、いつかまたその色が見られるんじゃないかって期待感から、視線を外せなくなる。
「君はとてもカッコいいんだな」
「え?」
「カッコいいという感覚も今初めてしったが、君はとてもカッコいいと思う」
「僕が?」
コクンと頷くワニ王子の髪がサラサラと音を立てて揺れた気がした。
「肌が白くて綺麗だし」
「は? 僕?」
「あぁ、筋肉がしっかりついていて、凛々しい肉体が長身だからか、とても見栄えがいい。赤茶色の髪はレッサーパンダの毛に似た色で、すごく、触れると気持ち良い」
「あ、あの……」
褐色の長い指先が風を起こした気がする。
赤茶色の髪に触れて質感を確かめている間、頬の辺りがこそばゆかった。
「黒い瞳はとても愛らしくて、私みたいな鋭い印象じゃない」
「ぁ、えっと」
たしかにワニ王子の目元は涼しげで、キリッとしている。
「レ、レッサーパンダだからじゃない?」
「なるほど。ランドを訪れるお客も君達を見つけると大騒ぎしているからな」
ワニ王子の唇がふわりと半月の形になった。
「あ……の、さ」
雄なのに、お互いに雄なのに、触れられてドキドキした。
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