第3章 人間になり……ました。

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「いや……」 「ぇ? や、じゃないの?」 王子だから、やっぱり雄なんだ。 とても綺麗だけど、裸見たじゃん。 ぶら下がってるもの見ちゃったじゃん。 そしたら男以外の何者でもないじゃん。 「このランドを潰さずに済むんだ。むしろ人間にしてくれたことに感謝してる。このランドには潰れて欲しくないんだ」 「……え? でもっ」 このランドは放っておいても潰れる。 そしたらワニの元の姿に戻れるんだぞ? 余計な皮膚一枚分をこんなふうに服として着なくてよくなるのに。 「ありがとう、その、えっと……レッサーパンダの……」 雄じゃ恋にならないから、番にならないから、なんだよって、神様に文句を言ってやろうと思った。 いや、今でもさ、どんなに綺麗でも男じゃんって思うよ。 身長あるし、転びそうになった成人男性ひとりくらい片手で抱え上げて助けちゃう、力強い雄だけどさ。 「まだ、僕も名前ないんだ」 「あ、そうなのか。私も、だな」 「そしたら、一緒に考えない?」 え? と、顔を上げたワニ王子と真正面で視線がぶつかった。 光の加減なんだろう。 真っ黒なはずの瞳は神様が灯してくれた明かりのせいで、一瞬、ワニ色に輝いて、息を呑むほど綺麗だった。 「僕らの名前、ふたりで考えよう」 本気で本当に願えば、願いは叶う。ワニ王子の、ランドに潰れて欲しくないっていう願いも、叶うんだ。
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