第1章 かかって、恋。

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「まぁーったく、うっるさいのぉ」 月がとても綺麗な夜だった。 外灯がほぼなくても、まん丸の満月のおかげでとても明るく感じる夜、いきなり耳元で声が聞こえた。 「ほら、お前の願いを叶えてやる。だからもう、四六時中わしのことを呼ぶでないぞ」 かなりご立腹な様子の、ねずみが 足元にいた。 ねずみなのに 仁王立ちで腕組んで、文句をぶつぶつ言っていた。 「わしも忙しいんじゃ!」 「へ? あの……、は? 声?」 「さすがにそのままの姿でお主の恋を成就させてやることはできないからの。人間の姿になってもらった」 「は?」 手が人の形をしていた。 そして、足もあって、ぁ……股のところにブツもぶら下がっている。 毛が、ほぼない。 股のところと脇のところ、あ、あと頭にも生えてるな。 でもそれ以外はツルッツル、丸裸、全裸の人間、雄、が。 「僕が……人間?」 レッサーパンダだったんだ。さっきまで。 もふもふ愛くるしさを作り出していた毛がなくなった。 「そうじゃ。人間にしてやったぞ。レッサーパンダの姿のままじゃ恋がどうのと言う前に食われるぞよ」 「あ、あんたが? 僕を人間に?」 「んまーっ! あんたとは失礼な奴じゃの! わしゃ、神様じゃ!」 「ねずみ?」 ねずみが大きく溜め息を吐く。 といっても踏み潰せそうなほど小さいから、溜め息だって、とても小さいけれど。 「踏み潰すなよ」 心の中を読んだようなタイミングでそんなことを言われて、思わずビクッとしてしまった。 image=495915089.jpg
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