第1章 かかって、恋。

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「そうじゃ、わしは神様じゃから、ここら辺一帯の、神様ぁ! と呼ぶ声の全てが耳に入ってくる」 エッヘン と組んでいた手を腰にもっていき、小さな胸を思いっきり反らしてえばってみせた、ねずみ。 「ねずみではないわ。神様じゃと言うておろうが」 「はぁ、神様……」 「そう、そしてお主が最近うるさくてうるさくて敵わないから、願いを叶えてやることにした」 「願い……」 「ずーっと、ずーっと、願っておったじゃろ?」 神様、どうかお願いです。あのワニと言葉を交わしたい、番になりたい。 「……」 「レッサーパンダのくせに変な奴に惚れたのぉ、お主。ずいぶんと変わり者じゃ」 「あ、あの」 「わかっておる、わかっておる。あっちも人間にしておいてやる」 そこでねずみの神様がニヤリと笑った。 なんだ? この神様。 もっとさ、神々しかったりとかさ、優しい慈悲の心に溢れているもんじゃないのか? なんか、こう。 「あほう、それは仏のほうじゃ。いいか? 神様というのはこの日本にどのくらいおると思っている? ものすっごい数で、そこらじゅう神様だらけじゃ。便所にだっておるほど。そして変な神様もおる。貧乏万歳な奴もおるんじゃから、ねずみの神様だっておるじゃろうが」 ぁ、自分で変な神様っていう自覚はあるんだな。 「うるさいわ、このレッサーパンダめ」 そうレッサーパンダだ。 なぜかワニランドでワニと共に飼育されている謎多きレッサーパンダ。 強面のワニと愛くるしいレッサーパンダの組み合わせは実に意味不明で、ここに来るお客さんの半数以上がその謎に首を傾げる。 「どれどれ、お主の恋の相手を今度は人間にしようかの」 「あ、あの! 神様!」 「だーかーら! うるっさい! お主の心の声と充分会話しておるじゃろうが! それに加えてでっかい声出されたら、鼓膜破れるわ! あほたれ!」
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