第2章 雄ですけど!

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――まず、先ほども説明したように、人間として生きていくために必要な知識はその脳内に全部詰め込んでおる。今は実感がないかも知れぬが、ちゃんとその場面場面で、脳内に知識として入っているから、戸惑うことはないじゃろう。その証拠にちゃんと二本足ですんなり歩けたであろう。そんな感じで元レッサーパンダ、元ワニでも驚くことがないように設定してある。わかったか? 「全っ然、わかってないっ! ねぇっ! オス! 雄じゃんっ! オスー!」 思いっきりワニが雄なんですけど! てっきり雌だと思ってたんですけどっ! 「アーハッハ! やっぱり知らんかったのか! やっぱりのぉ」 「はっあぁぁ?」 「雄じゃよ? 最初っから、ほれ、そこの解説読んでみよ」 「……」 指さした場所を見ようと一旦檻を出た。 そこには、この檻にいる動物のことが詳細に書かれている。 オーストラリアワニ、オーストラリア固有種、クロコダイル科―― 「――雄」 「のぉ? あ、あと、文字が読めたじゃろ? そんな感じにふたりとも人間の知識は普通のそこら辺にいる人間よりもしっかり詰め込んでおるから」 「そんなの聞いてない! っつうか! それ、最初に普通問うべき問題じゃない?」 「ほぉ……」 必死に抗議しながら檻に戻ると、ねずみが腕を組み、顎の辺りを指で擦って、しっかり見ないとわからないほど小さな顔をしかめた。 「お主は恋をするのに性別などというものを気にするのか?」 「は?」 「恋に性別なんて関係ない! いいか? 好きになってしまった! それが男同士で、たとえ禁忌だとしても! 好きなんだぁぁぁっ!」 「はぁ?」 「それが……恋というものじゃぁぁん」 握り、潰してしまいたい。 なっんだ、それ! まず、男同士って時点で本能的にダメでしょ! 繁殖できないんだもの! ダメでしょうが! 「えぇー? でも、繁殖だけが全てじゃないじゃなぁい? っていうか、日本の神様的にはそういうのけっこう大丈夫よ? あれ、異国、西洋の神様だと、あっかーん、ってこともあるかもしれないけどぉ」 「って、めぇ!」 「アハハ、ごめんごめん、まさかなぁとは思ったんじゃ。でも、とりあえずはもう叶えちゃったから、頑張って! の?」
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