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大爆笑する花崎に、恵太は苦虫を潰したような顔をする。
「女、地雷踏むとはねぇ・・・・・・ククッ」
ようやく花崎は笑いが収まったようだ。しかし顔は笑ったままの姿が張り付いている。
苛立ちを花崎にぶつけるように、机の上を爪でカタカタ叩く。花崎はにやけ面を恵太へ向けた。
「うっせ、それよか、今度はなんだ?」
「ああ、この男の始末。こいつも悪人だよぉ。あと、隣の家はこの仕事ばれないようにすりゃいいけどぉ、あの女、ヤバげならこっちで始末しとこうかぁ?あ、でも、あんた、情ってもん、欠けてたねぇ」
さすがに仕事の話になると切り替わるようだ。
「結婚詐欺だってぇ。依頼者は復讐したいようだよぉ」
顔に一切の感情を消して、一枚の写真を取り出す。
爽やかな短髪の男の写真。写真の男は、悪人に見えぬほど爽快な雰囲気を持っている。
束縛女の事は頭の隅へ追いやり、写真の男の略歴に目を通す。見た目を使ってか、と呟いた恵太の声に花崎は嬉しげな顔をした。
傍らから色々と話を吹き込む花崎へ一瞥を喰らわし、荷物を手早くまとめる。
「まだあるよぉ。男の手口」
「うっせ。それだけなら、もう帰る」
「つれないねぇ」
ヘラヘラ笑いながら、恵太の右手へ封筒を突っ込んだ。恵太は中身にぎょっと目を開く。
「多くねぇか」
「一週間、でやってねぇ。情報はこちらでも調べるけどぉ、基本お前単独だよぉ」
切りにかかってんのだろうか、と内心の声を押し止め、恵太は平静を装う。しかし、いまいる場所もなにもわからないのだ。ただの写真のなかで男は不敵に笑い挑発をしていた。
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