第1章

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 依頼の困難さに比例しているのか、渡された金額はいままでで最高。だが、その金からは強い恨みのようなものも感じる。 「これが最後と思ってくれていいよぉ」  はっと顔を上げ、花崎の目を見ると笑っていた。子供のような無垢な瞳で。 「やるよ」  恵太はそう言わざるを得なかった。  店を開け、久しぶりの仕事に人はあまり入ってこなかった。それでも真夜中過ぎまでやってマンションへ戻ると、由璃という女の姿はなかった。  さすがに半日以上待ち続けられなかったらしい。執念深く待っていそうだったのに、と苦笑いを浮かべる。  マンションの階段を上がり、自分の部屋のドア前で鍵を開けたときだった。 「けーた、帰ったのぉ」  甘ったるい女の声が家の中から聞こえる。鍵は与えなかったはずだと、疑問に思いながらドアから手を離した。  身を引いて去ろうとすると、ドアの開く音がする。恵太は思わず階段に向かって駆け出した。 「けーた、待ちなよぉ、ちょっとぉ」  馬鹿馬鹿しい。部屋を荒らされたらヤバイかもしれない。あっちの仕事道具は別の場所に隠したはずだけれども、ばれない保証はない。  第一別れたつもりなのだ。女のしつこさに顔をしかめた。  誰かに電話するような時間帯でもなく、車にのって一晩過ごした。  朝になり、眠れなかった辛さを覚えながら、背伸びをする。女が出掛ける時間帯を見計らって家へ向かうと、丁度隣が顔を出していた。 「あ、お隣さん、昨日、彼女うるさかったですよ」  爽やかな男が眉宇に怒りを浮かべ、恵太に詰め寄ってきた。恵太はため息を吐く。 「あいつ、彼女じゃねぇよ」 「は?彼女じゃない・・・・・・?」 「別れた。あと鍵渡してないのに勝手にはいられてたな」  呟いた言葉に隣は目を見開いて、信じられないと呟いた。その言葉が、なぜか恵太の耳について離れなかった。
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