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一日、二日、日はたっていく。やりたい仕事も休んで裏家業に勤しむが、写真の男の居場所も素顔もわからない。仮面の姿はあらかたわかったけれども、だ。
妙なことにあれから由璃の姿が見えなくなった。そして・・・・・・。
「また会いましたね」
張り込み先で隣の男に出くわすことが多くなった。
そして約束の日。調べあげることもできないまま日にちはたち、恵太はさすがにお手上げだった。
まさかのことが頭を過りながら、一応の支度をする。万年筆のような形をした筒へ毒矢を仕込み、銃を忍ばせる。
死ぬか、生きるか。それとも生かされるのか。
男がよく目撃されたと言われた場所へ向かおうと、マンションの階段をかけ降りる。その足は最後の五段目で止まった。
思わず唸り声を上げ、目を背けた。階段下に横たわるのはよく甘えてきた猫。人が、誰かが、ヤっている。ナイフで切りつけて。
はじめて背筋が凍ってきた。
(警告か・・・・・・?)
恵太はそっと猫を跨ぎ、一礼をした。本当は・・・・・・だが、知らせて恵太が疑われたらそのまま捕まるのは明白だ。
しばらくその場を動かずにいたが、やがて決意を新たに歩きだした。
自ら罠へとかかりにいくように。
黒々とした曇り空の街へ真っ直ぐと見据えて、向かっていく。
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