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花崎からの連絡係から知らされた、男の目撃ポイントへ着く。レオナルドというカフェを睨み付けながら、サングラスかけ、赤い羽根つきの黒帽子を深々と被った。
反対側に赤いジャンバーを来たチャラ男が歩いてくるのを見て、息を吐く。
花崎は見張りを出してくれたらしい。あれだけ情報しか知らせないといっていたのに。
恵太は他人の振りをしながらも、安心からか頬が緩むのを止められない。チャラ男が横を通り過ぎ行くのを見送り、ゆっくり深呼吸をして道へ視線を向けた。
レオナルドにいるという話だが、全く姿が見えない。それどころか隣に引っ越してきた男が入っていった。恵太の顔は強張る。
「まさかな」
「まさかだよ」
気にしてなかった背後からの声に振り向くまもなく、恵太は気を失わされた。
目を醒まして目の前にあったのは、詰めたいコンクリートの割れた床。ほこりがふわりと浮き沈みしていた。
恵太は頭が殴られたように痛いのをこらえ、起き上がろうとする。
「くっ」
手足に縄が食い込んできた。そして口に猿ぐつわを噛まされていることにも気づく。
「いやぁ、恵太くん、いい眺めだねぇ」
聞き覚えのある声のする方へ顔を向ける。ニヤリと花崎が笑いかけてきた。
そのとなりにはあの写真の男。由璃を縛り上げて、恵太の目の前へ突き出してきた。
「この女、処分しなかったねぇ。予想外だよ。そのお陰でいろいろ、ねぇ」
「な、何をした」
「へぇ、なんにも知らないんだねぇ。君は」
恵太は歯を食い縛る。たしかに何も知らない。何も知らなくとも、言葉の先は予想がついた。
「この女、売女のように近づいてねぇ、いろいろ情報を盗まれたんだよぉ?理由知ってるぅ?」
ヘラヘラと笑いながら告げていた花崎の目がナイフのように鋭く光った。
「あんたを救うためにだってよ」
花崎の憎しみのこもった声を恵太は聞いたことなかった。胸を突き刺し、抗う気力もなくしていく声。
弱りきった彼女はあの日と違って、嫉妬に狂った顔をしてなかった。
「けー・・・・・・た」
優しく微笑んでいった言葉は銃声に吹き飛んだ。恵太は必死に腕を伸ばそうと、もがく。だが、縄は外れなかった。
彼女から流れ行く赤い川に恵太は縛られた口から叫び声をあげる。
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