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〔3〕
田村に車で迎えに来てもらい、遼、優樹、アキラの三人は『ゆりあらす』に向かった。
詳しい話は向こうに着いてからと、アキラは何も話さない。だが遼は、その苦渋の表情から漠然とした胸騒ぎを感じていた。
彼らを迎えた神崎の表情はいつになく硬く、最近見せるようになった気さくな友人の顔は微塵もない。
それは、遼が美術室で初めて会った時に見た、まさしく刑事の顔だった。
「言ったはずだ、須刈君」
リビングでテーブルを挟み向かい合うと神崎は、静かに、しかし断固とした口調で言い放った。
「軽率でした……申し訳ありません」
アキラは素直に詫びて、目を伏せる。
「来栖先輩に何かあったのか? 俺達にもわかるように説明してくれよ」
何事かを察したのだろう優樹の問いに、神崎が小さく溜息をついた。
「来栖君は、石膏像制作者の話を須刈君から聞いて、思い当たる人物に会いに行ったのかも知れないんだ」
予感が逃れようのない事実として目の前に突きつけられ、遼は愕然とした。
犯人を捜したいと願い警察の真似事をした結果、もし関係のない人間が犠牲になったとしたら、責任は自分にある。悔恨に唇を噛むと、アキラが「大丈夫だ」と言うように手を重ねた。
「多分、来栖は何か切り札を掴む事が出来たんだ。そして確かめに行った……目的は解らないが、都合のいいカードを得るためにね。あいつの性格はわかっていたはずなのに、危険性を軽く見ていた」
アキラの口調は冷静だが、いつもより気持ち弱気に聞こえる。
「なんだよ、あんなヤツどうなろうと勝手じゃないか? まだ事件に関係してるとは、限らないんだし」
面白くなさそうに呟いた優樹を、遼はきつく睨んだ。
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