第11章

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「来栖先輩がどんな人間であろうと、君にそんなことを言う資格はない。僕も彼の事はあまり好きじゃないけど……だからといって、どうなってもいいと言うのは間違っているよ。君は本気でそう思うのかい?」  途端、優樹は赤面した。 「……悪かった、もう言わないよ」  神崎が意外そうな顔を向けたが構わず、遼は「手掛かりは?」と尋ねる。  すると神崎は、上着のポケットから小さなメモリースティックを取り出した。 「須刈君から電話をもらってすぐに、館山署の少年課から来栖君のパソコンデータをコピーしてもらってきた。捜索願が出された時に手掛かりとして預かったらしいが……サイトのブックマークに、SNSとメールのログだ」 「じゃあ、来栖の友人関係は調査済みですね?」  アキラに聞かれて神崎は、苦々しそうに笑った。 「申し訳ないことに、警察は事件性のない行方不明者の捜索にはあまり熱心じゃないんだ。データはまったく手つかずでね、メールに関しては急いで当たってくれるように頼んできたから、そっちは任せてくれたまえ。あとは、そうだな……。彼がどんな人物を心当たりにしたのかわかると絞り込めるんだが、何か知らないかい?」 「来栖は自己顕示欲の強い男ですから、どこかに必ず何か形跡を残しています。秋本は何か聞いていないか?」 「いえ……何も。先輩は最近、僕にあまり近づかなかったし……」  遼は少し決まり悪そうに、アキラに向けた目を臥せた。 「そう言えば俺も少し気になっていたんだった。ヤツと何かあったのか?」  「別に、大したことじゃありません。館山の画材屋で先輩に会った時、ちょっと嫌がらせのようなことをされて……一緒にいた大貫の叔父さんにきつく注意されたんです」 「何をされたんだよ」 優樹が真面目な顔で問いただす。 「だから、大したことじゃないって言ってるだろう? いつものように、モデルになれって迫られただけさ」  顔を上げ、遼は笑顔で答えた。余計なことを言えば優樹は怒り出すに違いなく、今はなだめている時間など無い。  遼の意図を察したのか、アキラもそれ以上は聞かなかった。
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