第2章

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 あの若い刑事、神崎と自分が見た景色を優樹が見たはずはない。  彼女の思念が神崎を取り込むのが遼にはわかった。そして深く青い海とその中に漂う制服姿の少女。 「何故君は……」  優樹の勘が鋭いことは以前から気づいていた。  クラスメイトに呼び出されたとき、必ず彼が助けに来てくれた。ただ、そんな気がしたから、と言う理由だけで。  試験の時もヤマを張れば八割方は当たる。田村と大貫が釣りに行くときも「今日は釣れないよ」と彼が言えば本当にまるで当たりがなかった。  たまたまだよ、と、彼は言うが、その的中率に肌寒さを覚えたことさえある。今回石膏像を割ったのさえ、意図しないところで彼の勘が働いたのかもしれないとすれば……。 「ごめん……。そのことは後で話すよ」  遼はそのまま優樹の方を見ずに、小枝子が用意してくれた簡易ベットに潜り込んだ。  不満の残る顔をしていた優樹も、それ以上追及するのをあきらめたのか自分のベッドに入る。  しかし夜が更けるにつれ、遼の脳裏には止めどもない考えが駆けめぐり、なかなか眠ることが出来なかった。 「遼、寝たか?」  同じく寝付くことが出来ないのか、優樹が声を掛けてきたが聞こえないふりをする。  心配してもらえるのは嬉しかった。だがどこかで迷惑に思う気持ちに戸惑っている。  これは自分の問題だ、と、遼は心に言い聞かせた。今までのように頼ってはいられない。 「……寝ちまったのか」  暫くして優樹の寝息が聞こえ始めたが、遼はまんじりともせずに天井を見つめていた。
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