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「ミア、箪笥ってどこに置くの」
自信の身長の二倍くらいはある、見るからに重そうな箪笥を片手で軽々と持ち上げて、弟が姉に聞いた。
「部屋の隅っこ。南側のカーテンのとこ。下ろす時気を付けてね」
姉はやや早口で、弟に箪笥の置き場所を教えた。
「うん、分かった。・・・ところで、今日のお昼ごはんってミアが作るの?」
笑顔で答えた後、ミアの方を見て少し嫌そうな眼をして尋ねた弟に、ミアは「うん」と当然のことのように答える。
・・・今日は外で食べてこようかなあ・・・。
台所でボウルに入った鶏肉にコップ一杯分のお酢をだばだばと注ぎ入れるエプロン姿のミアを見ながら、ココは思った。
実質その考えは正しい。ボウルの中の鶏肉は、山ほどの山椒と唐辛子、あと何だか良く解からないその辺の調味料類を混ぜ込まれ、物凄く毒々しい赤色になっている。
・・・ミアが作ったお料理を、笑顔で食べきれる人なんかそうそういないだろうなぁ。
ミアがまた何かいらんものを入れたのか、シュウシュウと不気味な音を立てながら濃紫色の煙を吐き出すボウルと、よせばいいのにまた試験管に入った変な極彩色の液体を入れているミアの姿を見て、
この部屋の片付けを終えたら迷わず外食しに行こう。ついでにあのボウルの中の物体も隙をついて捨ててしまおう。そう固く決意して、ココは手で持ち上げていた箪笥をすとん、と姉の指定していた場所に置いた。
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