幸福

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 人影は大きな倉庫の前で足を止めると、片脇にあるちいさなパネルに暗証番号を打ち込み、近くにあった扉をそっと開いて私を中に入れた。  そして背後から私の口を塞ぎ身動きが取れないようにする。  この人が何者なのか私には分からない。でも、今の私にとってあの男達から匿ってくれるのであれば全て救いだった。それに私には、はなから抵抗する気なんてない。この人が誰かわからなくても、なんとなく予想はつくじゃないか。きっとこれでいいのだ。  そんなことを思考していると、足音が近づいてきた。四人、間違いなく男達だ。私の口を塞ぐ手に力が入る。私自身も、心臓が嫌な高鳴りをみせている。たっているだけで精一杯だ。  やがてすぐ近くで足音が止まると、話し声が聞こえてきた。 「ちっ、まずいな」 「どうかしたんすか」 「嫌な予感はしてたがやっぱりだ。この辺りは‘青’の奴らのテリトリーだ」 「まじっすか」 「仕方ない、一旦引くぞ。おとなしく付いて来い」 「はい」  足音は静かに去っていった。
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