『王子専属従者、マーツは憂う』"無自覚な行動"トマスのその後

10/10
前へ
/10ページ
次へ
「ふーむ、そこまで思ってるのか。意外だな」 ん、真剣さがやっと伝わったかな。 「真剣だよ。私もそうなるとは思わなかったくらいだよ」 「相手は好きな相手がいるんだろ? 辛いだろーが」 なっ、急に同情されてもな。 「確かに辛いけど、こういう気持ちになれたのは幸せだよ」 「そうか」 「うん」 そうやってお互いに少しの間黙った。 「なら、仕方ない。俺も一先ずはお前とヤるのは諦めるわ」 「はは、ありがとう。お酒くらいは交わそう」 「そうだな。しかし本当残念だ。気が変わればいつでも来いよな。相手になるからさ」 「ああ。まあ、そんなことはないだろうけど、気持ちだけは受け取っておくよ」 「ああ、待ってるぜ」 言うが速くか、尻を軽く叩かれたので、「うわっ」と、変な叫び声が出てしまった。 「そこ! 静かにって、またお前逹か」 「すみません、私の責任です。なので場所を移ります」 「ああ、そうしてくれ」 護衛兵士長は自分のこめかみを片手で抑えながら、軽くあちらへ行くように指示をするように手を振った。 「少しは時と場合を考えるように」 「はっ、すみません」 って、結局私が怒られてる気がするなぁ。 まぁ、彼は彼なりに、私を応援してくれるようだ。 だから私は、希望は薄いかもしれないけれど、マーツが私の事を少しでも好いてくれるように、見てもらえるようになりたいと思うので、そうなるべく努力していこうと思いなおした。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加