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ただそれでも、まだ、いずれ私にもマーツと一緒になれるチャンスが来るかもしれないと、そう思ってしまう。
きっと君を大分困らせてしまっただろうな。
それでも今は辛くとも、君の王子への思いを応援したいと思う。
その気持ちも嘘ではない。
私のこの矛盾に白濁したこの気持ちはひとまず呑み込んでおくよ。
どうかマーツが幸せで居てくれるようにと、そう思うから。
私はルナール王子に恋をしていたマーツごと好きになったんだから。
仕方がない。
だから君の望むように、『優しい兄』として接するよ。
せめてこの性欲を直接君へは向けないようにしたい。
ただ純粋な愛だけを向けられるように。
己の辛さを抱える強さが欲しい。
性欲の排出物の他に出たものは、儚く淡い溜め息と、一粒の涙。
どうかそれだけで押し留められるように、その滑る拳を握ってみた。
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