『王子専属従者、マーツは憂う』"無自覚な行動"トマスのその後

6/10

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
身を整えて、気持ちは優れないながらも仕方なく警備の仕事に戻ると、警備兵の同期に声をかけられた。 彼とは少し親密な存在なのだけど、今はそっとしておいて欲しい。 私語が目立たないようにと、背中合わせにして立って話しかけてきた。 「なあ、最近溜まってるんじゃないか」 「別に、そんなことないよ」 「そうか? 俺は溜まってるんだよ。ほら、ここ最近忙しいだろ」 「そうだね」 大体こういった話の場合は後の予想がつきやすい。 「だからさ、後でヤらないか」 やっぱりか。相変わらずストレートだな。 大袈裟に溜め息をついて応える。 「君のそういう直球なところは好きだよ」 「そうだろっ、だからいいだろ?」 嫌味で言ったのに得意げだな。 嫌味が意味を成さない彼の性格は案外好きだけど。 「それとこれとは別だろ」 「そこをさ、何とか」 「いや……」 相変わらず軽いな。呆れてしまうというか。 それでも彼の軽さはある意味見習いたいと思っている。 彼の軽さに案外癒されてる面もあるので。 思い考えてしまうほうなので、そうしようにも空回りして正直落ち込むのだけど。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加