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グレゴリーさん
オレは、なんて器の小さい男なんだろう。
プライドが高いのも考えものだと思う。
いや、高すぎるのだろう。
今までの実績や功績に、あぐらをかいていたんだろう。
だったら、普通の考えを持って生まれた方が、
いくらか良かった。
オレは、リストラされてしまった。
会社の金食い虫だったからな。
事業縮小で、開発部はお払い箱さ。
そしてこうやって、いつまでもスネている。
この先、どうすればいいのだろう。
『コンコン』
「ごめんください!お留守でしょうか?」
面倒だから、出ないでおこう。
「引越しのごあいさつに上がりました。お留守でしょうか?」
隣か?
隣って、誰が住んでたんじゃ?
オレが、知らないうちに引越したのかもな。
オレは、ダルい身体を、引きずるようにして起きた。
「はい、ちょっと待っててください」
オレの住んでいるアパートは、8畳一間、風呂トイレ付きの
今となっては、解体されても仕方のないような、
ボロアパートだ。
いいところに引っ越してもよかったのだが、
なぜかここが気にいっていた。
おかげで、まとまった預金を残せた。
だから、こうやって、何週間も生きて行けるのだ。
オレは、古びた建て付けの悪くなったドアを開けた。
「はい」
「あ、えと、光友さんですね。わたし、
グレゴリー・マッシュと言います」
あ!外人さんか!うんうん、キレイな金髪だよ。
「光友恭一といいます。始めまして、グレゴリーさん」
「あ、ご丁寧のどうも。今日、引越ししてまいりました。
よろしくお願いします」
へー、この人、日本の生活に慣れているのかな?
お辞儀してるよ。
「はい、こちらこそ。よろしくお願いします」
オレも負けないように、丁寧にお辞儀をした。
「これ、詰まらないものですが、
受け取っていただけますか?」
「もちろん!喜んで!ご丁寧にありがとうございます!」
「いえいえ、そういわれると恥ずかしいですよ。
この辺りには少々慣れていないもので、
できればいろいろと教えていただきたいことも
あると思いますので、どうぞよろしくお願いします」
「いえ、遠慮なく仰ってください。私、失業者の身でして、
ヒマしてますから」
「ああ、それは…いえ!是非ともよろしく
お願いいたします。では、失礼いたします」
「はい、お気をつけて!」
なんて話し上手な人なんだろう。
とっても好印象だよ。
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