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見た目はそんな風だけど、野良猫の気質が抜けないのか、こちらが手を出せばするりと逃げる。けれど気付けば膝の上に乗っていたりする。
撫でればのどを鳴らし、かまいすぎれば引っかかれた。
猫を飼いはじめてから、一人でぼんやりしている時間は減った。帰ると生き物の気配がある。それだけで部屋の空気が違う。
シロはわざわざ買い求めた猫じゃらしにはあまり興味を持たなかった。そのくせ、PC用の毛バタキには興味深々のようで、散々じゃれて二本も壊された。
「シ、ロ」
床に腹ばいになって手を出すと、シロは一瞬こっちをみただけで、ふいっと顔を背けてしまう。
「シロ、冷たい」
がっくりうつぶせると、ぺろりと指先を舐められた。
顔を上げると、ゆらりと長い尻尾をふって、しょーがねーな、とでも言っているようだ。
べたべたされるのは嫌いなくせに、夜は必ず俺のベッドに入ってくる。
ぼんやりしたり落ち込んでいると、いつも隣に擦り寄ってきた。気持ちを察していると思うのは勘ぐりすぎだろうけれど。
寄り添う小さな温もりに気が和むのは事実だ。
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