多少の縁

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『何かあったんですか?』 何かあったかと聞かれたら、特別なことは何もないと答えたい。 ビールのおかわりを注文しながら沼田は話し掛ける。 『そう言えば、吉川さんとこのマンションの隣部屋、誰か入ったみたいですね』 俺は二杯目のビールを飲みかけて、手を止める。 俺は仕事がら、後輩の手前いつだって、冷静沈着でいなければならない……はず。 あー駄目だ! やっぱり気になる。 気になって仕方ない。 気になるとイライラするし、いいことないしな……。 黙ったままの俺を見て沼田も静かになった。 『なあ沼田、その隣の奴のことなんだけど、 そいつのせいで俺は最近イライラさせられて参ったよ』 話し好きな沼田は乗って来た。 『で、どんな奴なんです?』 『どんな奴? それが分かれば簡単なんだが、実は正体不明なんだ!』
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