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「相変わらず夜も昼も静かだな」
山本は仕事を終え、家に帰ろうと道を歩いていた。時刻はすでに深夜を回っており、人は誰も歩いていない。音と言えば、街灯にぶつかる蛾の音ぐらいだった。
自分の家の前に着くと、山本は何か違和感を感じ、隣の家に顔を向ける。
目の前に広がる光景に、山本は、何が起きているのか全く分からなかった。
いや、はっきりと分かるのだが、頭が追い付かない。理解ができない。
「やあ。こんばんわ」
いつの間にか目の前にいたソレが、話しかけてきた。山本は驚きのあまり反応できない。
「あれ?通じていないのかな?おかしいな?」とソレは首を傾げた。
おかしいのはお前だよ、とつい山本は叫びそうになる。いやむしろ俺がおかしいのかもしれない。
「この家の人ですか?ワタシは隣に引っ越して来たものです」
「……いや墜落だろ?」
山本はやっとのことで言葉を出し、隣の家、に墜落しているUFOを指差した。
「いえ、引っ越しですよ」
全身が銀色のソレは、あくまでも引っ越しと言い張るらしい。
「……どうして引っ越して来たんだよ」
「途中でエネルギーがなくなってしまったんで」
やっぱり墜落じゃないか、と山本は溜息をつく。
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