第1章

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 寂しかった。何もかもが。  これからは諒のボーカルでギターを弾こうと思ったら、もちろんバンドの一員ではなく、「サポートメンバー」という形になってしまう。  ギタリストとして、諒のボーカルのためにも、あんなに努力も積み重ねてきたのに…  「俺のギターは麻也しかいない」と諒は断言していたのに…  バンドの崩壊に言葉を失っている麻也に同情したということなのか、 諒が、「これからも麻也とは一緒で」とインタビューの時に発言すれば、 「バンドはフロントとリズム隊とに分裂したということですか」と訊かれ、 あるいは「二人でユニット結成ですか」と訊かれ…  これからの諒の、デカダンスでグラムロックやゴシックロック寄りの、マニアックな新機軸では、 麻也のギターの音すら採用してもらえるかわからない。  それが「サポートメンバー」というもので…  かといって、ディスティニー・アンダーグラウンドという大きくなり過ぎてしまったバンドから解放されて、 「これからは本当にやりたかったことをやる」とファンには内緒で張り切っている諒と、 正反対のメジャー志向でポップな曲を作る麻也とが、パーマネントなユニットを組むこと自体ありえないと、麻也は思う。
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