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お邪魔しますと言って家に入ると、そこには一つの完成された世界があった。
オレの部屋と同じ間取りなのに、空間の広がりや色の持つ暖かさが全然違う。
小物一つとっても、そこにそれが在るか無いかで全く雰囲気を変えてしまうという繊細なバランスで部屋の空気が作られていた。
オレには逆立ちしたって真似できないセンスだ。
「どうぞそこの椅子に掛けて寛いでください。
今お茶を入れますから」
オレは佐藤さんに促されて窓際に置いてあった小さなテーブルの席に座った。
まるでここだけ喫茶店みたいだ。
「紅茶とコーヒーならどちらが好きですか?」
佐藤さんも店員みたいだ。
オレは砂糖なしのミルクティーが好きだからとりあえずそれを作ってもらった。
そのあと自分の分の紅茶も淹れ、佐藤さんは対面の席に着いた。
「すみません、付き合いも浅いのに……やっぱり緊張しますよね」
そしてガチガチになっているオレに気が付いてそう言った。
「そ、それよりも何か折り入った話でも?」
「いえ、八雲さんと仲良くしたかっただけです」
俺が訊くと佐藤さんは照れた顔でそう答えた。
心臓が暴れて喉から出てきそうだ!
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