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なんて嬉しい事を言ってくれるのだろうこの人は。
だがオレは――。
「矢久保です」
「あ、すみません」
焦った佐藤さんは恥ずかしそうに目をそらした。
っく、かわいい!
どうしよう、本当に惚れたかもしれないぞオレ。
しかしその日は結局ちょっと他の住人について話しただけで、その小さなお茶会はお開きとなり、オレはまたつまらない自分の部屋へと帰ってきた。
― ― ― ―
「あぁ、佐藤さんとデートしたい……」
あの後、また時間の都合が良いときにいろいろ話したいとのことで、なんと佐藤さんの方からオレに携帯の番号とアドレスを教えてくれた。
オレは髪のことなどすっかり忘れて有頂天になってしまった。
いや、もう禿げてもいいんじゃないかな。
いや、やっぱりそれは困るな。
佐藤さんはハゲてる男は嫌いかもしれないし。
「あ~どうすれバインダー!」
オレが堪らず頭を掻き毟ると二三本落ちた。あえて何がとは言わないが。
そしてオレはそれを丁寧にティッシュに包むと、名残惜しむようにしてそっとゴミ箱に入れた。
ブーン ブーン
丁度そのとき、携帯のバイブレーションが鳴った。
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