記憶

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苛立つ気持ちはどこへやら、尋ねてきた女の顔を見てそれが吹き飛んだ。 小さい顔に大きく潤んだ目が印象的な人だった。真っ黒なストレートロングの髪の毛が紅い唇を引き立てていた。 隣のドアに彼女が引っ込んで、それから自分もドアを閉めた。 手には近所のパティスリーの焼き菓子の詰め合わせがある。引越しの挨拶にと押し付けられた。 今時珍しく丁寧な人だと感心した。それ以上に気持ちは高ぶった。 一目惚れとは言わないが俺の関心が彼女に向いたのはいうまでもなかった。正直なところとても好みのタイプだった。 彼女いない歴2年。さすがにいろいろ欲求も溜まりがちだ。 それにこのところの激務で生活に潤いを求めていた。 そこへ現れた隣人に気持ちが昂る。お近づきになりたい。
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