第1章

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小さな唇がさよならと告げた。 俺は突然の彼女からの別れを受け入れられないでいた。 横たわるベッドに放り出された携帯の画面に、彼女の笑顔。 まだまだ、俺の中で消せない彼女。 着信を告げるも、彼女ではない。 「おい、まだくよくよしてんのか?マユちゃんだけが女じゃないぜ。 女は星の数。今、いつものBARに居るんだ。出てこいよ。 女の子もいっしょだぜ。紹介するよ。」 親友のタクヤからだった。 ご丁寧にも、写メまで。 上気してすっかりできあがってるタクヤの周りに、ケバい女が数名、口の横でピースサインをしてアヒル口で、上目遣いで写っている、最近の女は、自分がかわいく見える角度を常に計算している。 俺はメールを無視した。 LINEはやらない。既読無視だとかくだらない人間関係に悩まされないための知恵だ。 もちろんマユともLINEはしなかった。そんなことをしなくても、俺とマユは信頼関係で結ばれているから心配ないと思っていたのだ。だが、それは俺の独りよがりだった。 女というものは、実に強かだ。マユはちゃっかりLINEで人間関係を管理していて、LINEをしない俺と付き合うことは好都合だったのだ。マユはしっかり、誰と付き合うことが自分にとって有利かを知っていた。 それでも、俺にとっては、たった一人の天使だった。 腹が減ったな。もうこんな時間か。時計は夜の8時を指している。そういえば、今朝から何も食べてなかった。 最近はショックで、こういう日が続いている。生きねば。 俺は、ノロノロと体を起こし、ふらつく足取りで家を出た。 玄関の鍵をかけていると、一人の女がこちらに歩いてきた。 うちのアパートに女なんて、いたっけ? 「こんばんは。」 女は挨拶をしてきた。 「こんばんは。」 俺も返す。近くで見ると、凄い美人だ。俺はドキドキしてしまった。 「昨日越して来た、ナナミと申します。ご挨拶が送れてすみません。」 丁寧にも、頭を下げてきた。今時珍しい。こういう独り者向けのアパート、挨拶などされたことはなかった。 「あ、どうも。よろしくお願いします。」 俺も釣られて腰を折る。 「それでは、失礼します。」
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