3人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言うと、隣の部屋に入っていった。お隣さんか。
最近はショックで朦朧としていたから、お隣の空き室に誰かが引っ越してきたのすら気付かなかった。
ていうか、人が住んでいなかった時と同じくらい静かだったけど?
俺はその足でコンビニに向かい、食料を仕入れ、自宅に帰った。
珍しく、久しぶりに食欲がわいて、まともに飯を食うことができた。
ナナミさん。もちろん、苗字だよな。
人間など現金なものだな。俺は、彼女を意識している自分が復活していることに苦笑いした。
翌朝、久しぶりにサボっていた大学へと足が向かった。
鍵をかけながら、チラリと隣の表札を見る。
「名波」
やはり苗字か。下の名前まで入れると、女の一人暮らしがバレて物騒だもんな。
下の名前、知りたいな。俺の中から、すっかりマユのことが抜け落ちていた。
俺はようやく、スマホの待ちうけのマユを消し、そして、アドレスからマユを消すことができた。
俺の大学へ行きたくない理由は、マユと出会うかもしれないということと、このクソ教授の講義を受けなければならないこと。そう、マユは俺より、自分の便宜のため教授を選んだのだ。
キモっ。俺はこいつとブラザーなわけだ。言っておくが、マユは、俺のお古だ。お前が後だからな?
睨みつけながらも、俺はしっかりと講義を受けた。
「なあ、今日、O女子大と合コンなんだよ。お前、来るだろ?」
なんで来る前提なんだよ。タクヤのフットワークの軽さには参る。
「お前、元気な。昨日も合コンだったじゃん。」
「あれは、違うよ~。ただのサークルの飲み会~。お前、バカだなあ。うちのサークルでお前に気がある女の子がいたから、紹介しようって思ったのに、ガン無視決めるんだものなあ。」
ああ、あの写メの頭の軽そうな女達か。どれ一つとっても、俺のタイプじゃない。
「行かない。」
俺が拒否すると、タクヤは馴れ馴れしく俺の肩を揉んで来た。
「なーんだよ。まだマユちゃんのこと、吹っ切れないのかあ?」
「そんなわけじゃないよ。」
「だったらぁ~。」
「しつこい!今そんな気分になれねえの。」
「やっぱ引きずってる~。」
タクヤがホッペをつんつんしてきたので、手で追い払う。
違う。そんなんじゃない。
俺は早く家に帰りたいんだ。
もしかしたら、またバッタリと。
そこまで考えて、俺は顔が熱くなるのを感じた。
最初のコメントを投稿しよう!