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プロローグ
ドクン、ドクン……
聞こえてしまいそうだ。
…僕の鼓動がこんなに激しく波打っているのが。
こんな薄っぺらい布だけじゃ、きっと伝わってしまう。
僕の……本当の気持ちも。
準人の手は僕を捕まえて、『逃がさない』と言わんばかりに
強く握られていた。
僕は『もう逃げられない』ということを悟った。
そして僕の身体は勢いよく準人の腕にグイッと引き寄せられ、
やさしく抱きしめられた。
僕は……僕は、あんな風に君を傷つけたのに。君を裏切ったのに。
そんなに優しくされたら、僕の惨めさが際立ってしまうじゃないか。
いま、どんな顔で君を見れば……どんな風に接すれば、いいのだろうか。
思わず顔を上にあげるともう唇が迫って来ていた。
――――僕と準人がこんな風になったのはいつからだろう。ああ、あの時だ。
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