プロローグ

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プロローグ

ドクン、ドクン…… 聞こえてしまいそうだ。 …僕の鼓動がこんなに激しく波打っているのが。 こんな薄っぺらい布だけじゃ、きっと伝わってしまう。 僕の……本当の気持ちも。 準人の手は僕を捕まえて、『逃がさない』と言わんばかりに 強く握られていた。 僕は『もう逃げられない』ということを悟った。 そして僕の身体は勢いよく準人の腕にグイッと引き寄せられ、 やさしく抱きしめられた。 僕は……僕は、あんな風に君を傷つけたのに。君を裏切ったのに。 そんなに優しくされたら、僕の惨めさが際立ってしまうじゃないか。 いま、どんな顔で君を見れば……どんな風に接すれば、いいのだろうか。 思わず顔を上にあげるともう唇が迫って来ていた。 ――――僕と準人がこんな風になったのはいつからだろう。ああ、あの時だ。
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