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「そう言えば、以前、ちょー迷惑な女がおったんですわ。30代半ばくらいの女やったんですけどね。ちょっと遊んでやっただけで、本気になってね。結婚する気でおったみたいなんですよ。誰がそんな年増と結婚します?そのことを伝えたら、その女、自殺しよったんですわ。まるで俺が悪いみたいですやん?」
うわっ、この男、本当のクズだ。最低。
恐る恐る、背負ってる女を見ると、泣いていた。
きっとこの女のことだ。空洞の目からハラハラと涙が溢れ出ている。
俺は無性に腹がたった。
まだ、このバカ男が好きなのかよ。
こんな男のために、泣くのはよせ。
そう思った瞬間、その女がこちらを向いた。
しまった、同情してしまった。
こっちにくんな!来るんじゃない!
俺の思いとは裏腹に、女はどんどん俺に近づいてきた。
ミエルンデスネ?
「それじゃあ、俺、明日仕事あるんで。あ、残った酒、全部飲んでええですよ。おやすみなさい。」
ま、待て。これを、連れて帰ってくれ!
無情にもドアは閉められ、女だけが残された。
嘘だろう?
ああ、俺は視えるのさ。
たぶんこれからもずっと。
なんだって?あの男は嘘をついている?
そんな話はどうでもいい。
お前はあのクズのところに帰れ!
泣くな、うっとうしい。
わかったわかった。話だけ聞いてやる。聞いてやったら帰れよ?
なになに?結婚をエサにしたのは、あいつのほうだって?
結婚したいけど、借金があって結婚できない。
それさえきちんとすれば結婚できるって?
自分にもお金がなかったから、闇金で金を借りたのか。
バカだな。見るからに、クズだろ、あいつ。
なんで見抜けねえんだ。
で?借金だけ残して、トンズラしたわけね?あいつ。
職場にも借金取りに追い立てられて働けなくなって、ソープに売り飛ばされそうになったわけだ。それで自殺か。
あんなクズのために。
泣くな!クズのために泣くなんて勿体無いだろ。
わかった、わかったからもう泣くな。
俺が何とかしてやる。
俺は、バカが忘れて帰った携帯を開く。
酔っ払って忘れて帰ったのを黙っていたのだ。
きっと俺は、こうなることを予測していた。
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