第二章『鎖骨じゃなくて、よかったな!』

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オレが二階に上がると、とてつもない汚臭が鼻腔を刺激した。 オェッ、吐きそう……。 腐った魚の臭いに似てるけど、そんな生易しいレベルじゃない。 動物園、野生生物の口臭、三日間日光浴させたあとの生ゴミ……? 「一体なにやりやがった!」 オレは臭いの発生源、悪臭の渦の中心である(悲しいことに)オレの部屋のドアを思い切り開けた。 そこに広がっていたのは腐敗臭のめくるめくハーモニー。 きちんと毎日ファブリーズしてたオレの部屋の面影は皆無だった。 保科先輩は部屋の中心に茫然と座り込んでいる。 「すまん……。キミの見舞いの品にもってきたサバ缶が暴発して」 「サバ缶? 暴発? サバがこんなクセー臭いを?」 オレは床の上に転がっている缶のラベルを見た。 『シュールストレミング』 「これサバ缶違うから! 見舞いの品になんつーもん持ってきてんの?」 ※ちなみに『シュールストレミング』とはあの『くさや』を遥かに上回る悪臭を放つ外国の食べ物です。 「す、すまん。思春期男子の部屋はイカ臭いと友人に聞いていたので、それは女子高生的にキツイなぁと。だからそれが事実なら、去年買ったこのサバ缶の臭いで相殺しようと思って」
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