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そして、姫神に連れて来られた場所は雲ひとつない美しい空が広がり、心地のいい風が吹き抜ける校舎にして屋外である場所──
所謂、屋上だった。
俺は吹き抜ける心地のいい風を肌に感じつつ、内心では顔をひきつらせる。
おいおい。喧嘩して殴り合うぜって雰囲気出しながら呼び出したのはテンプレ感満載の屋上ですか姫神さん。
ちょっとヤンキー漫画読みすぎじゃない?
せめて体育館裏にしてくれ。というか、校内で殴り合いとか俺風紀委員長だから無理なんですけど。
粛正は良いけど。
あと、なんで屋上にギャラリーついてきてるんですか。意味がわからない。
そして何故煽るようなこと言ってるんですか。やめてください。
俺はこの現状を把握したくなくて現実逃避に耽っていた。
そんな中、俺達をズラリと囲む外野を無視して、姫神が口を開く。
「殴り会う前に条件を決めようぜ。先に一発当てた方が勝ち。そして、負けた奴は勝った奴の言うことをなんでも聞くだ。」
とてもありきたりな姫神が提示した勝利条件。
俺が勝利したところで特にメリットはないが、デメリットは多少生じるかもしれない。
「…なんでも、ねぇ…」
特に魅力が感じられない条件に俺は眉を寄せて微妙な表情で呟いた。
そんな俺に姫神は、自身が勝利した際の条件を告げる。
「因みに、俺が勝ったら今後一切その舐めた態度を止めることを誓え。」
威風堂々、流石番長の風格と言うか、迫力のある顔で告げた姫神。
それに対し、俺も不敵な笑みを浮かべる。
「へぇ、じゃあ俺が勝ったら俺のモノにでもなって貰おうかな。」
いつも通りの俺のキャラでそう告げた瞬間、姫神は俯いて拳を握りしめ、ギリリッと歯軋りをした。
「だから、俺は!テメーのそう言う心にもねーことを言うところが一番大っ嫌いなんだよ!!」
そう忌々しげに叫んだ姫神は、それが闘いのゴングと言わんばかりに殴り掛かってくる。
そんな光景をスローモーションのように感じながらも俺は心中で叫んだ。
え?待って!?何でそんなぶちギレてるんですかー!?
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